保険コラム

かんぽ生命・日本郵便、保険販売の業務停止へ~元保険営業が語る不正の実態~

手で×マークを作る険しい表情の男性

かんぽ生命と郵便局が保険不正販売で業務停止命令を受けるっていうニュースがあったんだけど、本当なの?

親戚や知り合いに郵便局で保険に入っている人がいるから不安なんだけど……

というか、そもそもどんな不正をやっていたの?

こういった疑問にお答えします。

2019年12月16日に、以下のようなニュースが発表されました。

金融庁、かんぽ・郵便に業務停止命令 不適切販売で27日にも発動、保険部門対象

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019121600794

簡単に言うと、「《日本郵便(郵便局)》と、その子会社である《かんぽ生命》が保険販売で法令違反を行ったため、年内にも業務停止命令を受けそうだ」という内容です。

このニュースを見たとき、私は「あぁ、やっぱりこうなったか……」と正直思いました。

というのも、この問題はここ最近の話ではなく、少なくとも私がまだ代理店で保険営業をしていた頃……つまり1年以上前から兆候があったからです。

この記事では

  • 郵便局・かんぽ生命が行っていた不正の内容
  • 保険営業の現場にいた私が実際に巻き込まれたかんぽの不正販売問題

について、元保険代理店勤務の私が実際に体験したことも踏まえながら解説していきます。

現在、郵便局から保険に加入している人や、郵便局員から保険を勧められたことがあるという人は、少しだけお時間を取ってこの記事を読んで下さると幸いです。

【2019/12/28追記】

金融庁から正式に行政処分(業務の一部停止命令)を受けたと、かんぽ生命から発表がありました。

行政処分の内容(どういった業務が止まるのか)についてを追記しましたので、ご一読ください。

 

郵便局・かんぽ生命が行っていた不正の内容

レッドカード

郵便局とかんぽ生命は

  • 保険販売に携わる組織・人物が絶対に守らなくてはならない《保険業法》
  • かんぽ生命が独自で定めた《社内規定》

の2つにおいて違反を犯しました。

この中でも特に《保険業法違反》は大きな問題であり、それが原因で金融庁からの業務停止命令につながったといっても過言ではありません。

保険業法って何?どういう不正があったの?

保険業法は簡単に言うと《保険を契約する契約者を守るための法律》です。ですので、ぶっちゃけて言ってしまうと「保険を契約させたい代理店側から見れば邪魔な法律」だったりします。

保険業法の代表的な内容としては以下のようなものがあります。

保険業法の内容(抜粋)

保険募集に関する禁止行為

保険募集を行う者は以下の行為をしてはならない。

  1. 虚偽の説明(事実と異なることを告げる事)
  2. 「重要な事項」の不説明(「契約者の判断に影響を及ぼす重要な内容」を説明しない、都合のいい部分のみを説明する。)
  3. 不適切な乗換募集(契約者の不利益となる事を説明せずに既契約を消滅させ、新契約を申し込ませる。)
  4. 誤解を招く説明・表示(誤った商品の説明をしたり、既保険の短所を不当に強調して誤解させる行為)

上記の内容を見ていただけると、契約者側を守るためにある法律だとよくわかるかと思います。

逆に言えば、保険業法を守らなくても良ければ「嘘の説明をして契約者をだまし(虚偽の説明・誤解を招く説明)、解約しなくてもいい保険を解約させ、自社の保険を新しく契約させること(不適切な乗換募集)」が可能になってしまうんですね……

そして、実際にそれを行っていたのが《郵便局とかんぽ生命》という事になります。

かんぽ生命、不適切販売が横行=顧客軽視浮き彫り-金融庁は処分検討

https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_hoken20190709j-02-w400

諸悪の根源は《企業風土》

不正の背景には

  • 販売員(郵便局員・かんぽ生命の営業)に対する過剰なノルマ
  • 新規契約を重視する報酬制度

という企業風土があり、それらをいつまでたっても改善しなかった経営陣には大きな責任があります。

販売員に対するノルマに関しては「郵便局員には年賀状のノルマがある」という話は割と有名ですので、それからもなんとなく予想がつくのではないでしょうか?

需要が無くても、とにかくノルマを達成しないといけないから無理をする、知り合いに手あたり次第に連絡して営業する、最悪の場合は自分で買う・契約する、そんな状態です。

そして、それは保険に関しても変わらなかったようで「法令違反を犯してでもノルマを優先した結果」が今回の業務停止命令につながりました。

また、新規で契約を取った販売員には高額な営業手当が支給されます。

これに関しては郵便局に限らず、歩合制の保険営業(生保レディなど)に言えることですが、「より多くの手当を得ようと、顧客に不利な契約を強いる販売員が一定数いる」のが実態です。

今回はたまたま《郵便局・かんぽ生命》が槍玉に挙がっただけで、正直、歩合制の営業員を抱える代理店には、似たようなことをやってる連中は少なからずいます。

実際に身を置いていたからこそ「この件は氷山に一角にすぎない」と断言できます。

《新規契約至上主義》が変わらない限りは郵便局、もっと言うと生命保険業界全体は良い方向に向くことはないのですが、正直、今の状態を見ていると厳しいと言わざるを言えないなと、個人的には感じています。

保険営業の現場にいた私が実際に巻き込まれた郵便局の不正販売問題

違反

私はちょっと前まで保険代理店で保険営業と契約保全の仕事をしていたのですが、その時、実際に「郵便局の不正販売問題」の当事者となったことがあります。

立場としては「郵便局側の不適切な乗換募集にダマされたお客様から、解約の電話を受けた代理店側の人間」というポジションです。

そして何より重要なのは「自分の所属していた代理店も、郵便局も全く同じ商品を取り扱っていた」という点です。

あれ?じゃあ、管理人さんは前までかんぽ生命の代理店に勤めてたの?

そう思われるかもしれませんが、違います。

実は郵便局は「かんぽ生命に限らず、複数の保険会社の商品」を取り扱っているんですね。

一例をあげれば

  • アフラックのがん保険
  • 住友生命の医療保険
  • 日本生命の年金保険

などなど、大手保険会社の商品も販売しています。

私が所属していたのはこれらの「かんぽ生命以外の会社の保険代理店」です。

で、私が受けた電話の内容は以下のようなものでした。また、契約者様はご高齢の男性でした。

契約者様
契約者様

郵便局で新しく保険を契約したから、あなたのところの商品を解約したい。

正直、これだけなら普通です。

ただ、次の言葉を聞いて「え?」となりました。

私

そうなんですか!

ちなみに、どういった商品にご加入されたのですか?

契約者様
契約者様

あなたのところと同じ○○生命の商品。

なんか郵便局の人が言うには○○の保障が足りてないから、新しい保険に契約したほうが良いんだって話だったよ。

んん?? なんかおかしいな?
そう思った私は一度、契約者様の契約内容を確認してみました。

そして、そこで愕然としました。

私

契約したのがかなり前だから、確かに保障が足りてないのは間違いないけど……

これ、わざわざ解約しなくても、特約を追加するだけで○○の保障が用意できるじゃないか!

新規契約にすると、今までよりも保険料が大きく上がるし、全然メリットがないぞ……

新規契約しなくても全く問題がない、むしろ、新規契約をしたほうが明らかに損をする内容だったのです。

早速、契約者様にそのことを伝えました。

私

○○様の現在のご契約状況ですと、今の契約に新しく〇〇の保障を特約で追加できますので、あえて新規契約をしなくても保障が用意できます。

また、新規契約をすると月々の保険料が大きく上がりますので、弊社の商品の解約ではなく、特約の追加で対応したほうが良いかと思います。

以上のように伝えた後、また、契約者様から衝撃の言葉が放たれました。

契約者様
契約者様

えっ!いやでも、郵便局からは、新しく保障を追加できるなんて言われなかったんだけど……

保険料は上がるけど仕方がないって言われたよ……

私

は?なんで同じ会社の商品なのに把握してないの?そんなことってある?

もう訳が分かりませんでした。

とりあえず、契約者様には再三説明した後、契約者様宛に「新規契約した場合と特約を追加した場合の保険料と保障の違い」をまとめた表を送付。

そのあとは、表を見て新規契約をするメリットが全くないことに気づいた契約者様が郵便局へ怒鳴り込んだり、それを知った保険会社から事情を聴かれたり、なんやかんやで上層部に報告書をあげる事態にまで発展したり、てんやわんやでした。

正直、その時は「郵便局の販売員が知識不足なだけなのかな?」と思ってたのですが、今年に入って以下の記事を目にしたとき「あぁ、あれは故意犯だったんだな……」と考えを改めました。

上客を「ゆるキャラ」「甘い客」と呼ぶ郵便局員

https://toyokeizai.net/articles/-/299151

私が対応した契約者様もご高齢の方でしたし、その方も郵便局というブランドを信じておられる方でした。

ですので、十中八九、「甘い客候補」だったのでしょう。

私の場合は、代理店側で気づいて契約者様も理解を示してくれたために未然に防ぐことができましたが、恐らく、多くの人は「郵便局のブランド」を信じて疑わず、不利な乗換をしてしまったと考えられます。

「郵便局のブランド」に胡坐をかいて、無理な保険販売を行った《日本郵便とかんぽ生命》。

これからどうなるかは知りませんが、せいぜい、今までの罪の報いを受けてほしいと思います。

2019/12/28追記:かんぽ生命から発表がありました

かんぽ生命《行政処分》

2019/12/27付で金融庁より行政処分を受け3か月間の業務停止になったと、かんぽ生命より公式発表がありました。

また、行政処分の責任を取り郵政3社の社長が辞任を表明するなど、かんぽ生命の周りがにわかに慌ただしくなってきています。(正直、社長が辞任したところで好転するとも思えませんが。)

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20191228-00429651-fnn-bus_all

なお、今回の行政処分・業務停止処分に際して、かんぽ生命より「行政処分中の対応について」というものが発表されておりますので、ここで簡単に引用、説明させていただきます。

一部の業務停止とは?どのような業務が停止されるのか?

郵便局、および、かんぽ生命の営業員による《保険販売(営業)行為・保険契約行為》が一切行えなくなります

なお、業務停止の期間は2020年1月1日から2020年3月31日までとなります。

既に契約している保険はどうなるのか?

既に契約されている保険に関しては一切の影響はありません。

被保険者が亡くなった場合や入院をした場合には、通常通りに保険金の請求等はできますし、支払いが遅れるなどの影響もありません。

また、住所の変更や解約などの手続きも通常通りに行えます。

あくまでも、「かんぽ生命側が主体となって保険の販売を行う事のみ」が禁じられているだけですので、住所変更や解約・保険金請求といった【契約保全業務】は通常通り行われます。

以前からかんぽ生命の保険に入りたいと思っていたんだけど、業務停止中は契約できないの?

今回の業務停止は「かんぽ生命側が主体となって保険の販売を行う事のみ」が禁じられている為、お客様側からの自発的な意思表示を受けて行う保険の販売、および契約の締結は通常通り行うことができます。

ただし、んぽ生命の商品は他社の保険と比較すると魅力の薄い商品ばかりですので、私としては他社の保険で代用することを強くオススメします。

以下は、かんぽ生命の主力商品のレビュー記事です。
かんぽ生命の保険を検討している方は、ぜひ、ご一読ください。

郵便局で保険を契約している人へ

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悪いことは言いませんので、別の保険代理店で保険相談をしてください。

正直、今の《郵便局》やその傘下の《かんぽ生命》は信用できないです。

それに、郵便局で取り扱っている商品よりもいい保険はたくさんあります。

以下は、かんぽ生命の主力商品である《養老保険》と《新ながいきくん》についてレビューした記事ですが、検証した結果、実際に他社の商品で代用したほうが数十万円~数百万円の保険料削減に繋がるという事が証明されています。

郵便局という大手のブランドに惑わされず「本当に自分に合った商品」を選ぶために、今一度、行動を起こしてみて欲しいと、私は願っています。

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